わたるんといっしょ
その言葉に誠一郎は眉一つ動かさずにいたが、誠一郎の背後に鎮座する汚泥がぴくりと動いた。
「龍娘先生から聞きました。兄の存在があるから、皆から否定され世界が認めてくれない、幸せを奪われたと、あなたが叫んでいたことを。
――初めてだったんじゃないんですか、お腹から声出して本音を言うのは」
微動だにしない誠一郎と、うぞうぞ蠢く触手。
「あの兄の弟だから、そうやってあなたは“諦めを決めつけにしてしまった”。自分は幸せになれないと、認められないと、みんなから距離を置いた。本当は簡単に、あなたの求める物は手に入ったというのに、“そうすることでしか本音を現せない”だなんて、本当に悲しい人だ」
誠一郎の影を見る。
誠一郎と共鳴したという影こそが、彼の心の形と言っても過言ではない。