わたるんといっしょ


可視化した心の形は禍々しくも、どよめく影の方が、その実、誠一郎よりも感情表現が豊かであった。


「……、で?それがどうしたと言うんですか、春夏秋冬先輩。言葉で説得したいなら――出来るものなら、俺はここまでやりませんよ。そうして」


渉の腹部に汚泥の拳が決められる。


匂いも相まって吐き出し背を丸める渉を、誠一郎は変わらずの無表情で見つめていた。


「こんなこともしません。俺なりの正義を邪魔しないでくださいよ。俺を救いたいのか分かりませんが、救わなくても結構。俺は俺なりに、頑張っているんですからね」


自分なりの正義を貫く。そう言った誠一郎の唇が綻んだ気がした。


「僕は、お節介なんですよ」


咳き込みながら出た台詞は、いつかを思い出す。


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