わたるんといっしょ


「っ……!」


誠一郎の無表情が崩れ、出てきたのは苦々しさ。舌打ちをしたのは何故だったか。――分かりたくもない、分かったら最後、今までやってきたことを“後悔”してしまうから。


「“邪魔”をするなっ」


怒号の合図で触手が渉に向かうも――反応したのは触手だけでなかった。


汚泥の胃がはち切れる。内側から食い破られた胃の残骸を貪る犬を後目に――


「お前、僕の渉を傷つけたな」


冷徹に無機質に、されど、殺気を瞳に宿した悪鬼が誠一郎の体を押し倒す。


「ぐっ」


倒れた誠一郎を守らんがべく触手が身を翻すが、犬が嬉々としてながら噛みつき阻止する。


空中での補食を見つつ、自身の腹を踏み台とする冬月を見た。


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