わたるんといっしょ


死に体を一本の糸だけで動かしていたのだろう。渉の言葉に安堵し、その糸が切れた。


意識をなくした冬月にぎょっとしたが、すやすやと幸せそうな寝顔あればこちらも安堵する。


――そうして。


「お人好しですよ、春夏秋冬先輩は」


立ち上がる誠一郎。冬月が倒れたせいか、渾沌の姿はなく、触手が宙を滑空する。


「っ……!」


冬月の体を庇うように前へ出た渉。へっぴり腰で目を瞑ってしまう何とも情けない姿なのに。


「強くなくても、貫ける正義……ですか」


触手が止まる。
目を開ければ、俯く誠一郎の姿。


「春夏秋冬先輩の正義は、世間一般から見て理想的なんでしょうが。本当の悪人前では、ただの噛ませ役にしかなりませんよ」


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