わたるんといっしょ


渉の体が脱力したのを手から感じ、犬童は立ち上がる。


「僕は、そんなつもりじゃ……」


続けざまに起き上がる渉でも、どこか放心気味であった。


そんなつもりなくとも、相手にとって見ればそうかと弁解を己で潰す。


渉とはこんな性格なのだ。他人よりもまず先に、自分の非を見つけて――


「『すみません』とか言ったら、ぶら下がってる海綿体チョン切るからな」


「……」


見抜かれたならば黙るしかない。何が適した返事はないか探して見るが、謝罪しか見当たらなかった。


「……。僕、まだダメですね」


「てめえとの付き合いみじけーから、なにあったかは知らねえし、興味ない。けど、ムカつく性格には変わりない」


「それでも遊びに来てくれる犬童くんは、優しい人ですね」


「人のトサカ撫でて楽しいかよ、戦後学生。――で?」


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