わたるんといっしょ
建物は変わらないというのに、参道から風車が消えた。
夢を見ている気分にもなれない、足裏から伝わる“踏みしめ”。
目を閉じ開く。この一瞬で人が眠りにつくわけもないのに。
――女の声が、聞こえた。
『呪わせて、呪わせて』と早口で紡がれる呪詛。
焦燥し、恐怖からかかしとなる渉の身であっても、カサカサと回る風車で我に返る。
「釘のない、わら……にんぎょう」
初めて聞いた単語のように発しながらも、やるべきことの再確認。渉は、駆け出した。
どこに、までは考えていない。木霊のように聞こえる女の声から遠ざかりたいが故に、神社の中へ。
外観は春夏秋冬家。けれど、春夏秋冬家の出入り口は真正面にある門扉ではない。住居用に立て直した際、拝殿として使われていた内部は取り壊した。門扉があるままなのは外観にこだわったためであり、出入り口として使えないよう中からつっかえ棒で開かずの門となっている。