わたるんといっしょ
ひきこさんの間近にいる渉は聞き取れたのだろう。
それが正解だったと、鏡を手にしていない少年は呟く。
鏡を持ってきていないことは好美でも分かった。
――どうして!
対処法を知らなかった好美が鏡を持っていないのはまだしも、分かっているのに持ってこなかった渉に叫びたくなるが、下手なことをすれば、ひきこさんが渉に襲いかかるのではないかと、好美は動けずにいた。
指先一つ動かすだけでも、最悪の事態を引き起こしてしまうような。
瀬戸際だ、正に。
神経が擦りきれる、呼吸でさえも止めたくなる緊迫感。
川のせせらぎすらも耳に入ってこないというのに。