わたるんといっしょ
(二)
「誰かっ、誰かあぁ!」
住宅街に響く少女の声。
ただならぬ雰囲気であり、少女が助けを求めていることなど、聞く人すべてに知り得よう。
夜、少女の悲鳴染みた呼びかけ。これらの要素だけでも、家から人が出て、少女の救出に試みても良さそうなものだが。
「誰、かっ、助け……つぅ、誰かああぁ!」
少女の叫びは続く。
助けてくれる誰かがいないから。
「っ、だれ……くぅっ」
声帯が捩れたように痛む、喉が渇いたと飲んだ唾の喉通りに咳き込んだ。
「げほっ、うぅ、だれ……か……」
鼻水がつまり息が出来ない。ティッシュを持っていないことを後悔しつつ、コートの袖で拭った。
全身が痛む。
河川敷からここまで、走り続けて、叫び続けた。