【完】運命は罠と共に
「どうししてこんな一軒家に1人暮らしなんですか?それに、もっと洋輔さんのこと知りたい」


「………。」


なぜか洋輔さんが停止してしまった。


「洋輔さん?」


「ごめん、ごめん。名前を呼んでくれたことに感動してた」


こんなに喜んでくれるなら、もっと早くから呼べばよかったと後悔してしまった。


「この家のことだろ。それ話すには俺の家族の話も必要なんだよね。両親だけど、5年前に事故で亡くなったよ。ここに両親と三人で暮らしてたけど、亡くなった後は俺が1人でここで暮らしてる。そして、二つ下の弟がいるけど、大学進学で家を出てそのままそっちに就職したからほとんど帰ってくることは無いし、最近はずっと会ってないな。他に聞きたいことは?」


初めて聞く洋輔さんの家族事情。


ご両親亡くなってたんだ。


それに弟さんもほとんど会ってないなんて……だから、普段話しに出てくることが無かったんだね。


こんな広い家に1人で暮らして寂しくないのかな?




「そんな顔しないでよ。両親のことはすごく悔しいし、寂しいけど今は奈々が傍にいてくれるしな。それに、近くにもう1人家族はいる。奈々も知ってるだろ?祖父の中尾清人な。じいさんも1人で暮らしてるから、俺がちょくちょく様子を見にいってる」


あー、中尾さん。


そっか洋輔さんのおじいちゃんだったな。


「中尾さんお元気なんですか?」


「元気すぎて困ってるよ。この前も俺が行った時、ちょうど脚立に昇ろうとしててさ。もうすぐ90歳になるのにさ、やめて欲しいよ。骨折したときも、原因は脚立から落ちたからだったのに、こっちは気が気じゃないよ」


言葉の割には、とても楽しそうに中尾さんの事を話す洋輔さんに、私も自然と笑みがこぼれていた。


「そうだ。奈々も明日一緒にじいさんの所に会いに行くか?じいさんも喜ぶはずだから」


「私が行ってもいいんですか?」


「いいに決まってるだろ。俺が独り身なのを一番気にかけてる人だから紹介したいんだよ。行ってくれるか?」


家族に紹介してくれることもすごく嬉しくて、無言で頷いた。


私の家族にも洋輔さんを紹介したいな。


今度提案してみようかな。


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