私を壊して そしてキスして

「あ、そうそう、私、菜那さんに差し上げたいものがあるの。こちらへ」

「えっと……はい」

「母さん、菜那が困るから」

「だって、念願のお嫁さんなのよ。少しくらいいいじゃない」


お嫁さんだなんて……ちょっと照れる。


至ってマイペースなお母様に連れられて、また別の部屋に連れて行かれる。


「菜那さん、これ、もらってくれます?」


お母様が差し出したのは、大きなダイヤが素敵な高そうな指輪だった。


「これ……」

「これはね、私も義理の母からもらったの。
これを翔梧のお嫁さんに渡すのが夢だったのよ」


そんなお母様の言葉がずっしり胸に響く。
家業は継がなくても、この家の息子には違いないのだ。


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