私を壊して そしてキスして
「翔梧ね、本当にあなたの事、大切に思ってる。
まさか、片思いの相手といつか結婚したいからって、縁談を断るとは思わなかったけど。
主人は呆れてましたけどね、私は応援してたんですよ。
家の息子も、なかなかいい男じゃないってね」
何かを思い出すようにクスクス笑いながら、私の指にそれをはめる。
「少し大きいわね。サイズを直しましょうね」
私の手から再びそれを外して、箱に収める。
「聞いているかしら。今、主人で5代目なの。
翔梧に継いでほしいと本当は主人も思っていたようだけど、あの翔梧がそんなところに納まるわけなくって。
あの子は昔から泥にまみれている子で、じっと座っているなんて考えられなかった」
にっこり笑いながらそういうお母様は、懐かしそうな顔をする。