バイナリー・ハート
「じゃあ、何がおもしろくないのか分かる?」


 ランシュは視線を逸らし少し考えて、再び結衣に視線を戻した。


「多分、思い描く通りのものが作れないからだと思う。理論も確立してて作り方も分かっているのに作れないんだ」

「どうして?」

「法律が邪魔するから。オレもそれに邪魔されて、先生に止められた」


 結衣の胸の中が、途端にざわついた。

 悔しそうに目を伏せたランシュの表情が、これ以上訊いてはいけないと警告しているような気がする。
 心に反して、言葉がポロリと口をついて出た。


「どんな法律?」
「絶対命令」

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