バイナリー・ハート
 人を傷つけたり法に反する事でなければ、無条件で命令に従う。
 そんな人はいない。

 自分で考え行動すると、時には人の命令に背く事になるだろう。

 同じ事をランシュも考えて作ろうとしたが、ロイドに止められたのだ。

 どうやらやはり訊いてはならない事を、訊いてしまったような気がする。
 少し後ろめたい気分になっていると、ランシュがニッコリ笑って唇に一本指をあてがった。


「ちょっとしゃべり過ぎちゃった。今の話、聞かなかった事にしてね」
「うん。ごめんね。私が余計な事訊いたから」


 結衣は苦笑しながら小鳥の電源を切り、テーブルに置いて席を立った。

 ダイニングの椅子にひっかけておいた買い物袋を取り、結衣はランシュに尋ねる。


「夕飯の買い物に行ってくるから、留守番頼んでいい?」


 ランシュは席を立って、こちらにやってきた。

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