バイナリー・ハート
 少しして唇を離すと、ユイがクスリと笑った。


「なんか久しぶりに聞いた気がする。あなたの”愛してる”」


 言われて初めて気が付いた。

 結婚して、いつもユイがいる幸せに慣らされ、いつの間にか言わなくなっていた。
 言わなくてもロイドの気持ちに変わりはないし、ユイもそれは分かっている。

 唇と身体を重ねる事で、言葉の代わりにしていたようだ。

 けれどロイドは知っている。

 愛してると言った時、ほんの一瞬見せる、ユイのはにかんだような嬉しそうな表情を。

 それを見るのが好きで言っていた事すら、幸せに有頂天になって忘れていた。

 ロイドはユイの胸に顔を埋め、強く抱きしめた。


「ユイ、愛してる」

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