騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~



次は20代前半の若いカップルの会話に耳を傾けた。




「気に入ったのなかったのか?」

「うーん。デザインはすごく気に入ったんだけど、私にはサイズが大きすぎて」




サイズ……?

あっ、そうだ。STAR☆はアメリカ製だから、小柄な人向けのサイズは用意してない。


日本の女性にはサイズも合ってないってことか……


そう言えば、わたしもアメリカにいた時はSTAR☆の洋服は大きすぎて合うものが少なかったっけ。




「さて、調査も終わったことだし!早速デートに行こう!」




まだ言ってるし……この人。

ジョンって笑っちゃうくらいに前向きなんだから。




「だからデートはしません!今日はこれにて解散!」

「え~!?麻菜ちゃん、ひどい……」

「ひどくないわ!麻菜ちゃんって気持ち悪いからやめて」




ビシッと言いきってジョンの方を見ると、彼は泣き真似をしていた。


その反応もまた面倒くさくて、ジョンを放ってさっさと歩き出した。





ここがこれからわたしが働く職場。


売り上げを上げるためにわたしたちが送り込まれたんだから頑張らないと。


わたしに課せられた任務を達成するのは、これからたくさんの困難が待ち受けていそうだ。






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