騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
それから他愛ない話をしながら、二人で並んで出勤した。
ちょうどデパートの社員用出入り口のところで、仲森さんに会った。
彼もちょうど出勤したところだったのだ。
「あ……」
お互い顔を見合せたまま固まった。
わずか数秒なのに、わたしにとってはかなりの時間に感じた。
「麻菜ちゃん?」
何も話さずただ仲森さんを見つめていたわたしに、流川さんが声をかけた。
仲森さんも流川さんも、まるでお互いなんて見えていないみたいだ。
お互いの存在をかたくなに無視している。
「麻菜」
流川さんに呼ばれ、再び彼の隣へ行こうとすると。
真剣な眼差しの仲森さんに呼び止められた。