騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
5.初めての・・・
「楽しかったね、秀ちゃん!」
「そうだなー……あっ、荷物貸して」
あまりアトラクションは乗れなかったけど、思う存分楽しんだ後、
近くのホテル、ではなく旅館に到着した。
車を降りると、そんなに重くないのに鞄を持ってくれた秀ちゃん。
「ふふっ、ありがと」
彼を見上げると、小さく微笑んだのが分かった。
「よくこんないい旅館、当日に予約できたよね」
目の前に広がるのは、わたしが入ってもいいのだろうかと思うような立派な旅館。
しかも100年以上続く、歴史のある旅館らしい。
「俺ら運良かったよなぁ」
偶然とはいえ、こんな旅館に泊まれることはそんなあることではない。
今日だって、ちょうどキャンセルがあったから、泊まれるようになったくらいだから。
「そうだね。計画性がない割にこんなところに泊まれるんだもの」
「ははっ!確かに俺らって、全くって言っていいほど計画性ないよな」