騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「マジか……えっ、ていうことは、麻菜ってその……」
「キスしかしたことなかった……それも秀ちゃんとのキスしか」
すると、見る見るうちに秀ちゃんの顔が赤く染まっていく。
こんな彼の姿、最近じゃ滅多に見られなかったのに。
「麻菜、モテるから……絶対向こうに彼氏いたと思ってた」
「それはあり得ないよ……ずっと秀ちゃんのこと好きだったし。秀ちゃんしか考えられなかったし。秀ちゃんとしかこういうことしたくなか……っ」
突然口元を押さえられ、続きを言わせてもらえなかった。
「それ以上は言うな。全く……麻菜じゃねーけど、俺を殺す気かよ」
こんなに真っ赤になった秀ちゃん、初めて見たかも。
初々しい高校生の頃の秀ちゃんでも、こんなに照れてるところ見たことがなかった。
「だって、本当のことだもん。わたしがこういうことしたいって思うのは今も昔も秀ちゃんだけだし……でも」
このことを考えると、ズキンと胸が痛む。
仕方がないことだって分かっていても。