騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
そう思っていても……
「ごめん、麻菜。頼むから、泣くな」
溢れてくる涙を、彼が親指の腹で拭ってくれたけど。
止まってはくれなかった。
「ごめん、麻菜」
「秀ちゃんの初めてはわたしが良かったよ……秀ちゃんの彼女はわたしだけが良かったよぉ……!」
泣きながら言うと、ギュッと痛いくらいに強く抱きしめられた。
「麻菜、泣いてるとこ悪いんだけど。めちゃくちゃ、可愛い。可愛すぎだろ」
泣いているわたしを見て、優しく笑顔を浮かべた秀ちゃん。
「これからはずっと麻菜だけだから……約束する」
「絶対、だよ……約束。これからは、わたしだけだからね……」
わたしの言葉にフッと笑みをこぼした秀ちゃんは……
頬を撫でると、そっと優しく口づけた。