騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「な、かもり……さんっ」
さらに一歩近づいてきた彼からまた一歩離れようとした時、不意に腕を掴まれてしまった。
掴まれた右腕が熱い……
「もうあの頃みたいに呼んでくれないの?」
「え……?なか、もりさん?」
絡まる視線……一瞬たりとも彼から目が離せなくて……
ずっと見つめ合う二人……
「昔みたいに“秀ちゃん”って呼んでくれないの?麻菜……」
「え……」
「呼んで、麻菜……」
そんな辛そうな顔しないで……
そんな辛そうにわたしの名前を呼ばないでよ……
“あの事件”からずっと、わたしの顔を見るたびこんな苦しくて辛そうな顔してた。
今でもずっとそんな顔させてるのは、このわたし。
わたしのせいであなたは不幸になってるから、だからわたしは……
そんな顔させたくなくて、あなたから離れたのに、結局またこんな顔させちゃってる。