大地主と大魔女の娘
 それだけではない。

 唇は乾ききってひび割れている。

 少し大きく口を開くと裂けて血が滲んでしまう。

 恥ずかしくなって視線を落とした。

 目に入る腕も同じようにカサ付いている。少し痒い。

 ここ一月ほど泣いてばかりいた。

 だから体中の水分が足りなくなったのかもしれない。

 身体を捻って腕をさすった。

 私がいつも頼りにしている木を削った杖。

 これも少し乾いた感触なのだが、それとはまた違った。

 同じようでいて違うその手触りを、何となく不快に感じた。

 地主様も同じ事を感じて不快なのかもしれない。

 眉頭は寄ったままで、表情には苦々しいものが浮かんで見える。


「まずは身支度を整えろ。そして食事を取れ。用意させる」

「お気使いいただきまして、ありがとうございます。ですが恐れ多いので、お気持ちだけいただきます。身支度を整えたらすぐに帰ります」

 頭を下げる。

 上げたとたんに、飛び込んできたのは一層顰(ひそ)められた眉だった。



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