大地主と大魔女の娘


 何故。


 そう思ったが黙っていた。

 しかし視線がそう訴えていたのだろう。

 彼は再び、私の頭を盛大に撫でながら説明しだした。

「君さー、ふるふる震えてるみたいに歩いていたし、子犬みたいに全部がふるふるしてて可愛いから!」

 私の瞳を面白そうに見つめ返しながら、彼はそうのたまった。

 やっぱり! 彼に心配りを期待してはいけないようだ。

 それに心使いの方も欠けている。

「……。」

 手にしていた杖を、思わず振り上げてしまいそうになったが堪えた。

 ぎゅっと力を入れて杖を握ったせいか、身体が小刻みに震え出す。

「じゃあ、ケインだ」

 イキナリ強そうな名前だ。

「前にボクが飼っていた黒い猟犬の名だよ。かっこいいだろう?」

 頷けるものか! 頷いたら最後、彼からはケインと呼ばれるだろう。

 それ以前に彼の元・飼い犬の名前って!?


 
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