花
「……だから、和ちゃんに助けて欲しいんだ」
和が″救いたい″と思った時、
同じタイミングで香澄が そう言うのが、聴こえた。
和は和で貴史の事を考えていたから、その前に香澄が話していた″理由″は聞けなかったのだが、
ここで改めて聞き直そうとは、思わなかった。
貴史が人間ではない と 分かっても、″助けたい″と思ってしまっているのだから、
和が考え事を している間に香澄が何を喋っていても、
もう何も関係ないように、思えた。
「…正直、今の話…ほとんど聞いてなかったんですけど(笑)…、
でも私……
宗谷くんを″救いたい″って すごく思うから…。
最初は全部 聞いてから って思ったけど…、
やっぱり今すぐ、行きたいです」
一言 一言を噛み締めるように ゆっくり そう言うと、
香澄は安心したように、笑った。
「そうかぁ~、聞いてなかったかぁ~笑
でも、いいよ。
和ちゃんは もし全部を聞いても、
引かないで居てくれるんじゃないか って、何となく分かったから、
もう大丈夫。
いずれ、全部を知る時が来るかもしれないけど…、
今は そんなの、どっちでも いいのかも…ね 笑
…あいつ、自分の事″死に損ない″だって よく言うんだけど、
今は とにかく″そんな事ない″って、言ってあげてよ。
俺とか凛ちゃんが言うよりも、
和ちゃんが言った方が かなり気持ち入ってる、と思うからさ」
香澄は、″和が貴史を好きだから″という意味で、言ったのだろう。
それを聞いた和が、渋々 認めるように
「…まぁ、否定は出来ませんけど…」
と言うと、
楽しそうに あはは と 笑って、言った。
「でも その方が、あいつには伝わるから」
最後まで本心の見えない不思議な人だったが、
貴史に関して話す時は、本当に その通りの ような気が したから、
和は黙って頷いた。