思い切りの良いドアの音に気付いて、

やはり貴史は、和の方を振り返った。


…何日か振りに、目が合った。


その瞬間、和は慌てて目を逸らし、

教室を飛び出そう とした。




しかし、できなかった。






「…あれ、

何で行っちゃうのー?笑」




…いつもと変わらない、貴史の声が引き止めたから。


思わず立ち止まった和だったが、頑張って貴史の声を振り切り、

再び走り出そうと、する。


しかし、いつの間にか近くに来ていた貴史に腕を捕まれて、

それは またしても、阻まれた。






「捕まえた!笑


何だよ、逃げなくても いいでしょ?笑」




本当に、和が避ける前と変わらない、あの笑顔で貴史が言った。




…いつも そう、だった。


いつも、貴史の笑顔が、和を引き戻す…。


でも、それが もう嫌だと、和は思った。


貴史が和に話し掛けるのは ただの気紛れで、

そこに居るのが たまたま和だからなのだ という事を、知っていたから。


気持ちが無いと分かって いるのに側に居られる程、

強くないと、思ったから。


捕まれている腕が じんじん してきて、

和は思っている事を、口に出しそうに なった。





< 80 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop