孤高の魚



僕は身じろぎもせず、ただ呆然と、尚子の緩やかな自慰行為を見ていた。

尚子は、僕に抱かれていた余韻で、架空の歩太に抱かれているのだ。
と、そう思った。

僕の匂いや体液をお風呂で綺麗に洗い流した後に、僕の……男の体温、肌の感触を忘れないうちに。

さっきまで僕に抱かれていた尚子よりも、もっとずっと、恍惚とした尚子の桃色の顔。

僕には何故かそれが、遠くからだけれどハッキリと見えた。


………


半分閉じられたピンク色の唇。
そこから見え隠れする濡れた舌。
高揚しながら引きつる頬。
震える瞼。



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