孤高の魚
衝動



………


ホテルに着いたのはまだ夜の9時を回った所だった。
眠るにはまだ早いけれど、この寒さの中またどこかで飲み直すには気力が要る。


「まだ、少し飲み足りないよね。
ビールでも買って来ようか」


そう提案して、僕は野中七海を部屋に残してホテルを出た。


………


足取りが軽い。
仙台(ここ)へ来て初めて、僕は清々しい気持ちで大きく空気を吸った。
夜のそれは冷たく、乾いている。
はあ、と勢いよく息を吐くと、白くなって直ぐに闇に紛れた。


ビールを4本、白ワインのハーフボトルを1本。
それからスナック菓子とチーズ、ミックスナッツを買った。

これから彼女と何を話そう。
話しながら飲んで、疲れたら眠ろう。
朝まで起きていたっていい。
けれど、新幹線には遅れないようにしないと。


そんな事をとりとめもなく考えながら、僕の胸は弾んでいた。



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