シュガー&スパイス
でも。
英司とこんなふうに話せたの久しぶり。
付き合う前の上司と部下、とまではいかないけど。
お互いを知る、いい関係になれるのかな……。
そうなれたら、嬉しいな……。
胸の中がふわっとあったかい気持ちになった。
その時、
「でも、そんな菜帆が……きだった」
小さな小さな言葉が風に乗って届いた。
ん?
はっきり聞こえなくて、顔を上げる。
でも。
見上げた先の英司は、何もなかったみたいに
ペットボトルから水を飲んで、それを喉に流し込んでいる。
ゴクンって浮き出た喉仏が上下する。
ボーっと眺めていると、その目があたしをとらえた。
うっ
慌てて顔をそむけると、英司が笑ったのがわかった。
なに?
なんて言ったんだろう……。
あれ?
なんだろ……
――……ズシ
……なんか、苦しい。