歩み
俺が今一生懸命しようとしている恋は、他の人に比べて、とてもちっぽけかもしれない。
けど、いつか大きくなる日はくるのだろうか。
この梅雨が明けたら、俺はなにをしているのだろう。
沙紀の笑顔を見ているかな…。
明日香は静かに涙を流し、これ以上何も言わなかった。
きっと俺の言葉を待っているのかもしれない。
明日香に近づいて、涙の理由を聞いてみる。
「どうした?なんかあったの?」
「私、沙紀に最低なことをしたの…」
涙をぽろぽろと流す明日香。
こんなにも自然に女優は涙を流せるのだろうか、とふと思った。
ワザと流す涙より、自然に流れる涙の方がよっぽど綺麗だ。
「え?どういうこと?」
明日香は手で涙を拭いて、ゆっくりと俺を見上げた。
明日香の瞳が、涙のせいで赤くなっている。
まるでウサギのようだ。
「私があの噂を流したの…。先輩に頼まれて…。」
明日香の言葉を聞いた途端、繋がったと改めて感じた。
やはりあの噂は司が仕組んだモノだったのだ。