歩み



再び明日香の顔を見ると、涙が太陽に反射をしてとても綺麗だった。
生まれ変わった瞬間を見た気がした。


泣くと人間は生まれ変わる。
きっとそうに違いない。


「ありがと!まじ感謝してる!!塚本、お前なら司に気持ち伝わるよ」



「そうかな?ありがとう。頑張ってみるね。歩くんも、頑張ってね!」



笑いあう俺たち。
廊下に広がる太陽の光。その瞬間、心地よい風が窓から入ってきて、俺の背中を押した。
気のせいかもしれないけど、『頑張れ』と言ってくれたはず。

だから俺は走り出す。



「人に気持ち伝えるのはすげぇ難しいけど、すげぇ大切なことなんだよな…」



最後に明日香にこう言って、明日香をそこに残し、走っていく。
履き慣れた靴で、道を進んでいく。


足が軽く感じた。
どうしてだろう?
太陽が、空が、風が、応援してくれているからかな。



明日香に貰ったメモ用紙を見ながら、沙紀の家を目指す。
そして、ある場所へと辿り着いた。



《水島》という表札。
可愛らしいガーデニング。


上を見上げると、窓からピンク色のカーテンが見える。



ここだろうか?



俺はおそるおそる、インターホンを押した。
聞こえてくる音楽。
それが途切れたと同時に、玄関のドアが開いた。



「あら?どちらさま?」



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