歩み



なぜ俺を疑わなかったのだろう。
普通ならこんなにも優しく誘導しないのに。

俺は疑問に思いながら、階段を上がっていく。
人の家の階段はどうしていつも怖いと感じるのだろう。

隼人の家に行ったときもこう思った。

慣れないのかな?



母親に言われた通り、奥の部屋を目指す。
ある部屋のドアに掛けられていたのは、木材製の名前プレートだ。
可愛い犬の絵が描かれている。

もしかしたら、あの犬を一番可愛がっているのは沙紀かもしれないな。


俺は深呼吸をして、部屋をノックする。


ついにここまで辿り着いた。
沙紀はどんな反応を見せるだろうか?



「はい?お母さん?入っていいよ」




俺はお母さんじゃないけれど『入っていいよ』と言われたのだから入ることにしよう。
もし『俺だよ』って言ったら『入るな』って言われそうだから。



俺は少しだけ躊躇い、
勇気を出してドアを押した。



広がる光。
そして目に映る、沙紀の部屋。



ベッドの上に座り、空を見上げている沙紀の姿がすぐに目に映った。




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