歩み
しばらく沈黙が続いた。
けど先に口を開いたのは俺だ。
沙紀が心配でたまらなかったから。
「大丈夫?」
いきなりこんな言葉を言われても、理解出来ないだろう。
けど沙紀は悟ったのか、首を縦に振って『大丈夫よ』と言ってみせた。
大丈夫なんかじゃなさそうなのに。
だって笑った顔、見せてくれないから。
「本当かよ?辛いなら辛いって言えよ。意地張らずに。俺が聞いてやるから」
沙紀のベッドに近づくと、心臓が高鳴った。
沙紀を見下ろすのは初めてかもしれない。
その彼女の姿が、とても小さく見えて、思わず抱き締めたくなるくらいだった。
「大丈夫だって。こんなのすぐに治るわ。心配しないでよ…」
沙紀は俺から目を背けた。
俺を拒否するかのように。
なんだ、結局伝わらないんじゃん。俺の気持ち…。
「心配するに決まってんだろ!?好きなヤツを心配して何が悪いんだよ?」
心配したら迷惑ですか?
迷惑なら、俺は消えますよ。