歩み
向き合えないのなら、存在したって意味ないじゃないか。
沙紀は俺を拒否するなら、拒否してくれても構わない。
けど、気持ちだけ伝えてからにして。
「…なに、言ってるの?」
「俺、お前が心配なんだよ。泣いてるのかな?って思うとすげぇ辛くなるし、笑って欲しいって思う。ずっと沙紀のこと考えてて、俺おかしいんだよ!!」
感極まって、こんなことを口にした俺。
でも伝えたかったことだから、後悔なんてしていない。
寧ろ伝えられたことに満足をしている。
沙紀は俺を見上げ、目を泳がせた。
戸惑っているのだろう、きっと。
「…司と別れたんだろ?沙紀が望むなら、俺のとこ来いよ…」
俺はこう言って、沙紀の腕を引っ張った。
そして俺の中へと案内をする。
初めて沙紀を抱き締める。
ずっとこうしたかった。
一度でいいから…。
もう少し強く抱き締めてもいい?
ぎゅっと沙紀を抱き締める。
沙紀の体が柔らかくて、ひょっとしかたら抱き枕より心地よいかもしれない。
「ちょ、ちょっと!!」
少しだけでいいから…
このまま時間が止まって欲しい…。