歩み


俺から必死に離れようとする沙紀。
けど俺は離そうとしなかった。


離れたくなかったんだ。



「…あたしの話、聞いてよ!!」



俺の胸の中で沙紀が大きな声を出してこう言った。
俺はこの言葉を聞いて、ハッと我に返る。
自分の世界に行きすぎたようだ。
もう周りの世界が見えていなかった。


俺は慌てて、沙紀を離して、沙紀の顔を覗く。

顔を真っ赤に染めらす沙紀。
そしてゆっくりと口を開いた。



「アンタって本当に最低ね…」



「…俺のこと嫌い?
だから嫌がるの?」




前にもこんなことを聞いた気がする。
その時の答えは『大嫌い』だった。


今日はなんだろう?
キミの答えは。



沙紀は真っ直ぐ、俺を見つめた…。








「大嫌いよ…」





ガラスが割れた気がした。
俺の中の硝子で出来た心は、跡形もなく粉々になっていく。



キミの答えは、また『大嫌い』



もう何を言っても無理なのかな?




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