歩み


この紅茶が角砂糖を受け入れるように。
俺は紅茶になるから、沙紀は角砂糖になって?
二人で混ざり合おうよ。
深く溶け合おうよ。



「ちょ…歩…」



あと少しで沙紀の唇へ辿り着くという時、俺たちの甘い時間を、ある音が引き裂いた。


…トントンというドアが叩かれる音。
さっきもこんなような音を聞いたぞ?
あれは年齢不詳の家政婦だった。
次は誰?
また家政婦だったら怒るよ。



「なんでだよ…」



軽く舌打ちをして、沙紀から離れていく。
俺は溜め息を漏らしながら、ドアへと近づいた。そしてゆっくり開けるのだ。


何故ドアが叩かれたら、開けなければならないのか。
誰が決めたのだろうか。開けなければ良かった。


「はいはい。誰ですか?」


鍵を開けて、部屋の外を見る。
顔を上げるとそこには、見覚えある顔があった。


「歩さん…」



「富田じゃん。どうかした?」



今日の富田はなにか様子がおかしい。
何かに怯えているような。



「歩、久しぶりだな」



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