歩み
いつもの電話越しの会話と、面と向かって話す会話とでは全然意味が違う。
今がこんなにも腹が立つなんて。
親父が何もかも悪い。
それに『あの順位を取るな』ってなに?
じゃあ俺は何位を目指せばいいの?
1位しか残っていないじゃないか。
何も知らないくせに、よくそんなこと言えるな。
「…うるせぇな。黙ってろよ。今勉強中なんだから」
手に力が入る。
いっそのこと、親父を殴ってしまいたい。
そしたらすかっとして気持ちよくなりそうだから。
「勉強と言って遊んでるんじゃないのか?勉強してないから鍵をしめてあったんじゃないのか?」
親父がアノ目で俺を見てくる。
あの人を見下したような、蔑んだような、アノ目。
俺が大嫌いな目付きだ。
癪に障って仕方がない。
「あの!初めまして!」
すると後ろから沙紀の声が聞こえてきた。
俺は後ろを振り返る。
沙紀は立ち上がり、こちらに向かってきていた。
「沙紀…」
沙紀に親父を会わせたくなかった。
親父は沙紀をもアノ目で見るだろうから。