歩み


親父に関わる人、全て苦しい思いをしている。
きっとそうだ、絶対にそうだよ。



「…すいません…お忙しいと思いまして…」



「何の為にお前に任せていると思っているんだ。…まぁいい。で、キミは歩の彼女なんだって?」


再び沙紀へと視線を向ける親父。
沙紀は笑顔のままこう答える。



「はい。水島沙紀と言います。」



その二人のやりとりを、後ろから黙って聞くことしか出来ない俺。
この空間、息が詰まりそうだ。
苦しくて過呼吸になりそう。

まるで酸素を与えられない金魚のようだ。



その次の瞬間、親父は信じがたい言葉を口にした。



「今すぐ歩と別れてくれないか?歩を勉強に集中させてやりたいんだ。」



時が止まって気がした。沙紀は意味がわかっていないのか、驚いた顔を見せている。



なに言ってんの、お前。



「は!?ちょっと待てよ!!なんだよそれ!!」



我慢出来なくなった俺は、親父に近づき、さっきの言葉の意味を求める。



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