歩み


すると沙紀はさっきとは真逆な表情を俺に向けてきた。
突然の沙紀の笑顔に戸惑ってしまう。



「え?な、なに?」



「内緒!早く自転車に乗って!今日遅刻した罰よ」



沙紀、まだ覚えていたんだ。
俺が寝坊して遅刻したこと。
忘れていると思っていたのに、そう都合よくいくわけないか。


無理矢理自転車に乗らさせられる俺。
沙紀も荷台に乗って、俺の体をぎゅっと後ろから抱いた。
この瞬間が好き。

沙紀と一緒にいるんだなって改めて思うから。



「じゃあ出発!早く漕いで!」



いや、ちょっと待ってよ。
今からどこに行くわけ?とりあえず真っ直ぐに進めばいいの?



俺は「行くよ」と沙紀に確認して、自転車を漕いだ。



「次の角、右ね!」



後ろで道案内をする沙紀に従って自転車を走らせる。


いつもよりペダルが軽く感じた。
今ならどこへでも行けそうな、そのくらいの勢いはあった。



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