歩み
惜しい、あと少しなのに。
結局その人形は少し動いただけ。
女子高生は諦めたのか不満そうな表情をしてそのUFOキャッチャーの前から去って行った。
どうして人間は届きそうなモノを簡単に諦めてしまうのだろう。
今のUFOキャッチャーだってそうだ。
あと一回やったら取れたかもしれない。
簡単に諦めないでよ。
もしかしたらあの人形は取って欲しいと願ったかもしれないのに。
「ちょっと、歩?何してるのよ?」
沙紀が心配したのか俺を呼びに来た。
沙紀の声に我に返る。
「ごめん。考え事してた。で、なにしたいの?ここで」
「あたしがしたいのは、これ。」
そう言って、あるモノを指差す沙紀。
それはプリクラの機械だった。
モデルが上目遣いをして可愛く写っている。
「は?なんで!?」
沙紀とプリクラ機を交互に見て、理由を聞く。
すると沙紀は顔を真っ赤に染めてこう呟いた。
「歩とのプリクラが欲しいんだもん…」