歩み


ちょっと…反則でしょ。
そんな顔して言うなよ。

急に心臓が激しく鼓動し始める。
そんな表情をする沙紀を抱きしめたいと思ったけどここは一応公共の場。

欲情よ、止まれ。



「あー、もう!可愛いなー!早く行こうぜ!」



照れる顔を隠して沙紀の手を握り、プリクラ機の中へと入っていく。
この空間だけ異空間に感じた。
真っ白なプリクラ機の中は、「無」を連想させた。



俺はお金を入れて、操作をしようとするが数秒で断念。
意味が分からない。
背景?肌の色?

そんなの知るかよ。


俺は沙紀にバトンタッチをして、それを後ろから眺めていた。



するといきなりカメラが位置を変えた。
俺は再び戸惑ってしまう。


「歩、笑ってね?」



「当たり前だろ?沙紀も笑えよな!」




このプリクラは携帯の裏に貼ることとなった。
沙紀と初めて撮ったプリクラ。
その中の俺はどこか照れて笑っていた。


沙紀と付き合って長いけど、まだまだ新鮮なことは沢山あるんだな。



俺は願っていた。
いつかこの携帯に貼ったプリクラの隣にお前たちと撮ったプリクラを貼りたい…と。






< 230 / 468 >

この作品をシェア

pagetop