歩み
「でさ、そのドラマのラストが…」
俺は昨日のドラマの話を優に話していた。
そのドラマの終わり方がどうも納得できなくて。
優もその話に耳を傾けていたけど、あるモノのせいで会話は一時中断をした。
そのあるモノとは、優の携帯電話。
優は携帯を開き、内容をチェックしている。
メールかな?
誰だろう?
気になってしまう俺。
けど相手が誰かなんて聞けるはずがない。
プライバシーの侵害だから。
「歩、ちょっと用事出来たから行ってくるな」
小さく笑い、こう言って俺の前から姿を消した優。
また、あの笑顔。
作った笑顔。
俺は小さく唇を噛み締めて、去っていく優の後ろ姿をじっと見つめていた。
誰なんだろう?
優を呼び出したのは。
もしかして相沢瞳?
告白…とか?
いや、そんなのダメだ。
「歩、鈴木くんどこに行ったの?」
すると沙紀が俺の顔を覗き込みながら、心配した面持ちで話しかけてきた。
沙紀の後ろには小林がいた。
小林は、何かに押しつぶされそうな、何かに我慢をしているような、そんな表情をしていた。