歩み



遠くの方で花火が打ち上げられる俺が聞こえてくる。
毎年のこの日は、花火大会なのだ。

けどその花火の音が切なく喉に響いた。



「待って待って!!殴ったのは鈴木くんじゃないわよ。それくらいあたしでも分かる。鈴木くんが殴るはずないもの」



「じゃあ誰が?」



俺の頭は混乱中。
シャープペンシルさえ持つ力が残っていない。



沙紀は真っ直ぐ俺を見つめ、口を開いた。



「…きっと百合の元カレよ。あたしたちの高校の三年生で名前は滝川直先輩」




積み重ねてきた積み木が崩れ落ちた瞬間だった。
滝川直?
俺たちの先輩?
小林の元カレ?


何で?何でそいつが今頃になって現れてくるの?

意味が分からない。



「…何で今更?もう別れたんだろ?」



「あたし百合から相談されてたの。滝川先輩からメールが頻繁に来るって。あたしは気がないならはっきり言った方がいいよって言ったんだけど…」



「けど?」



「…それ以上話してくれなかった…」




その時、グラスが倒れ、鮮やかな麦色をしたお茶が零れたのだ。


まるで、誰かの涙のように。



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