歩み


「え?なに?」



近くにあったタオルで額から流れる汗を拭きながら、優を見る。
優はたこやきソースを持ちながら、一点の場所を見つめていた。



「百合の姿がないんだよ、ずっと前から…」



「…え…?」



優に言われて気付く。
そういえば小林の姿をさっきから見ていない。
クラスの女子たちは接客の方に回っているのだが、小林の姿だけがなかった。
沙紀はいるのに、なぜだ?



嫌な予感がする。
心臓がうるさく鳴り始める。
緊張とかそんな理由ではない。
きっと怖いのだ。


滝川直先輩の存在が脳裏にちらつく。
優は気付いているのだろうか?
先輩の存在に。



「トイレとか行ってるんじゃねぇ?」



下手なフォロー。
けどこれしか思い付かなかった。



さっきとは別の意味を持った汗が額から溢れる。


頼むから、俺の下手なフォローに納得をしてよ。



「歩ー、優ー、交代しようぜ」



するとクラスの友達が俺たちと変わってくれた。それを聞いた途端、何かに解放されたようになった。


優はきっと小林を探しにいくだろう。




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