歩み


影からこっそりと二人を見ている俺たち。
二人は俺たちの存在に気付いていないようだ。
ここからでは二人の会話は聞こえない。
動作で会話を読み取るしかないのだ。


何を話しているのだろう?
さっきから小林が一方的に喋っている。
怒ったような顔をして先輩を見つめている。


一方先輩は笑いながら小林の髪の毛を触っている。



なに?どういうこと?
やはり動作だけでは読み取れない。



「歩、もう行こ…あたしこれ以上見たくない…」


すると突然、沙紀が俺の制服を引っ張りこう言ってきた。



「うん…俺も見たくない…」



実はもう俺も限界だった。
これ以上、二人の姿は見たくない。
優への罪悪感だけが積もっていくから。



俺たちは小林たちに背中を向けて、苦しい胸を抱えながら教室へと戻っていく。



「今のことは内緒だぞ?沙紀。優が苦しむから…」



賑やかな周りの声すら今の俺には聞こえて来なかった。
衝撃が強すぎる。



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