歩み
顔色ひとつ変えずに、
目を一度も泳がさずに、優は俺を見つめてこう言った。
この言葉を信じなくてはいけない。
優は小林が安里と別れた事実を聞いても揺るがなかった。
それはもう小林を想っていないということ。
俺はそれを受け止めなくてはいけない。
けど俺は忘れていた。
心にはもう一人の自分がいるということを…。
「ふぅん。つうか~沙紀が言ってたけど、広瀬って何か壁みたいなものあるよな」
「壁?」
「お~、だってダチ作らねぇじゃん」
そう、俺が思った広瀬の壁というものは『友達』だった。
広瀬が沙紀以外の女子と話している光景を見たことがなかった。
いつも読書をしている。
それが引っかかって仕方がなかった。
だから俺は広瀬から一歩退いているのかもしれない。
彼女の中に踏み込むタイミングを逃してしまったのだ。
「何か近寄りにくいよな…」
近寄ろうとしない俺も悪いんだ。
広瀬を知ろうとしない自分が悪い。