マスカレードに誘われて

「私だって……嫌だった……」

「……うん」

「それに、ずっと一人で……寂しかったよ!」

言葉にならない。
今まで我慢してきて言えなかったモノが、一気に溢れ出す。
彼女の中で決壊したモノは、全て嗚咽となって出てきた。

そんな彼女を抱き返し、優しく頭を撫でる。

「今までよく頑張ったね」

「お兄ちゃん……」

「これからは、一緒に頑張っていこう」

「うん……うん!」

素直な気持ちが、涙となって流れ出る。
それは、壊れた彼女の心を癒すのに十分な材料だった。

「……ようやく年相応の子になったな」

「うるさいよ」

軽口を叩く兄をたしなめる妹。
築けなかった兄妹関係は、この日から徐々に築いていく。

東の空が、白み出していた。

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