御劔 光の風2
日向は寂しそうに微笑むと小さく頷いて口を開いた。

確かにすべてはそこから始まり日向を捕らえて離さないのだ。

「小さい頃の記憶がね、ないんだ。覚えてたのは名前だけみたい。」

何度この説明をしただろうか、返されるの表情や反応はだいたい分かっている。

てっきり哀れみの言葉が返されると思っていたのに、貴未から出た言葉は感嘆の言葉だった。

「よかったじゃん!」

意外な反応に日向は思わず俯きかけていた顔を上げて貴未を見つめる。

「一番大切な名前覚えてんなら大丈夫だって!お前の記憶も家族からの愛情も全部名前が教えてくれる。まあ気にせず行こう!」

考えもしなかった方向に貴未は日向の選ぶ道を描きだした。

思わぬ展開に日向は動揺を隠せない、今まで貴未の様な人には出会ったことがなかったのだ。

「そういう…ものかな。」

初めての感情に戸惑いながらも触れてみる。

「そういうもんじゃねえの?えっ?軽い?」

何かおかしなことを言ったのかと貴未もまた驚いた表情をして日向に問い返した。

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