御劔 光の風2
訪れた沈黙にお互い顔を合わせながら固まってしまう。

しかしそれも少しの間の話だった。

「ふふ、そんなもんかも。」

楽しそうに日向がもらす。

次第に日向が笑顔になっていったのを確認すると、貴未はいつの間にか離れていた手を差し出し握手を求めた。

「俺たちの記憶もここからだ。ま、仲良くいこうぜ!」

この人の考え方はおもしろい、まだまだこの国には楽しいことが隠れていそうだ。

握り返した手のぬくもりを感じながら日向は未来に期待をせずにはいられなかった。



日向が貴未と共に王族区域を抜けた頃、カルサの私室では長い沈黙を破る声が聞こえていた。

声の主はサルスだ。

「いつ目を覚ますんだろうな。」

閉じられたままの二人の目蓋はこのまま開かないように感じて不安になる。

大人数が去った後のカルサの私室は静まり、孤独や淋しさを感じさせるからなのかもしれない。

小さな不安がサルスの中で生まれ、それはやがて大きく育とうとしていた。

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