叶多とあたし
叶多を『お兄ちゃん』と呼ばなくなったのは、叶多の最初の帰省の時だ。
『お兄ちゃん』なんて呼びたくなかった。
だから、『叶多』。そう呼んだのに。
彼は飄々と「よぉ」なんて言った。
責める意を込めてそう言ったのに、簡単とかえされてしまったのでは意味がない。
むかついた。
だから言ったんだ。
「もう、あんたのことは『お兄ちゃん』ってよばないから!」
って。
なのに。
「あぁ」
それだけだった。
「大っ嫌い……大っ嫌いよ!」
それが彼に対する口癖になってしまった。