ヤサオトコ
仕事が終わった。
いよいよ、憂鬱な時間。
課長の田原と栗崎は、新近畿ホテルのロビーで宣伝部長の橋爪沙幸と待ち合わせをしていた。
(なぜ、ホテルのロビーで、待ち合わせなんかするんだ)
栗崎は田原の見え透いたセッティングに、腹立たしい思いを抱いていた。
「お待たせ」
沙幸が現れた。
「いえいえ。今来たとこですわ」
田原が笑みを浮かべて答えた。
「部長、お世話になっています」
栗崎も頭を下げた。
「部長、お寿司、好きでっしゃろ」
田原が沙幸に尋ねた。
「ええな。私、大好物やわ」
「それで、ここに来たんですわ。このホテルの地下に、とびきりええ店がおますのや。部長に、ぜひ、食べてもらおう、思いまして」
「ありがとう。楽しみやわ」
三人は、寿司割烹『玄海』へと向った。