ヤサオトコ

 「火事は、どこ、どこ、どこ」

 男はバッグと服を脇に抱えて、慌てふためいている。


 「非常階段はこっちだ」


 栗崎は非常階段に男を誘導した。



 先日、ビデオ喫茶の火事で、数人が焼死。
 このことを新聞が大きく取り上げていた。


 栗崎はこの記事が印象に残っていたので、予め非常階段の場所を確認していた。
 頭上には、煙探知機の警報がけたたましく鳴り響いている。


 従業員が大声で客を非常階段に導いている。
 階段には、人が溢れていた。


 二人は、3階から1階まで階段を駆け下りた。そして、急いでビルから外へ出た。


 フ~~。


 新鮮な空気が流れて来た。


 「助かった」


 外の空気を吸った時、栗崎は生きている事を実感した。







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